2023年06月05日

日本アメリカ史学会 第20回年次大会プログラム

会員各位

2023年9月16日(土)・17日(日)に開催される、日本アメリカ史学会第20回年次大会のプログラム概要(暫定版)が決定しましたのでお知らせいたします。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

日時 2023年9月16日(土)・17日(日)

会場 北海学園大学(札幌市豊平区旭町4丁目1番40号)

連絡先 大森一輝(omoriアットマークhgu.jp)
開催方法 会場での対面方式のみ


2023年9月16日(土)
幹事会 12:00〜13:00

シンポジウムA 13:30〜17:00
「アメリカ史におけるポピュリズムの伝統」
報告者:
 小原豊志(東北大学)
 肥後本芳男(同志社大学)
 山本貴裕(広島経済大学)
コメンテーター:
 古矢旬(北海道大学名誉教授)、櫛田久代(福岡大学)
司会:中野博文(北九州市立大学)

総会 17:15〜18:15
懇親会 18:30〜20:30

9月17日(日)
自由論題報告 9:30〜11:30
(第1報告 9:35〜10:10 第2報告 10:15〜10:50 第3報告 10:55〜11:30)
第1セッション
﨑山みき(一橋大学・院)
「第一次世界大戦下の銃後の食糧保存運動と家政学者――米国国立公文書館における食糧庁記録群に着目して」
丸山実里(一橋大学・院)
「第一次世界大戦下のアメリカにおける『敵性外国人』政策」
繁沢敦子(神戸市外国語大学)
「ジョン・ハーシー『ヒロシマ』前後の『ニューヨーカー』誌と検閲――ダニエル・ラングの核関連報道を中心に」

第2セッション
阿部純(東北大学・院)
「日系人強制収容をめぐる裁判闘争――ホーリ訴訟における戦時経験と『クラス』に注目して」
竹野貴子(椙山女学園大学・講/国立国会図書館調査員・非)
「アメリカ地方政府の『外交』――気候変動緩和に向けた取組に着目して」

シンポジウムB 13:00〜16:00
「アジア系移民は『セトラー』なのか――植民地主義、戦争体験とその記憶化」
報告者:
 秋山かおり(国際日本文化研究センター)
 新井隆(東洋大学・講)
 和泉真澄(同志社大学)
コメンテーター:
 今野裕子(亜細亜大学)
司会:長島怜央(東京成徳大学)

シンポジウムC 13:00〜16:00
「ケアのアメリカ史――パンデミック期を経て再考するケア」
報告者:
 松原宏之(立教大学)
 畠山望(湘北短期大学)
 西﨑緑(熊本学園大学)
コメンテーター:
 平体由美(東洋英和女学院大学)
司会:小野直子(同志社大学)・山中美潮(上智大学)


[シンポジウム趣旨文]
シンポジウムA
「アメリカ史におけるポピュリズムの伝統」
 21世紀はじめの四半世紀をポピュリズムの時代と言う人々がいる。様々な国や地域に現れた人種差別や移民排斥などの動きが、ポピュリズムという言葉で説明されるようになり、現代社会の時代的特徴とさえ考えられるようになっているのである。また歴史研究においても、アメリカ合衆国の歴史を通貫する文化のひとつとして、ポピュリズムに関心を持つ人々が現れている。このシンポジウムは、こうした近年の動向を踏まえて、ポピュリズムという概念でアメリカ史を把握することの意義と課題を論じるものである。
 周知の通り、ポピュリズムという言葉はアメリカ合衆国で生まれたものである。横山良氏の研究で明らかにされたとおり、それは19世紀末の人民党運動を由来とする。人民党運動を大文字のPのポピュリズム、人民党以外の歴史事象に現れたポピュリズム的なものを小文字のpのポピュリズムとして使い分けることも、ポピュリズム史研究ではよく見られるようになっている。
 今日のポピュリズムは、社会に亀裂を生み、人々の対立を増幅させる大衆運動を指すことが多い。社会抗争はアメリカ史研究で重視されてきたトピックであり、多くの優れた研究を生みだしている。初期アメリカの分野では人種やジェンダーなどをめぐる差別や抑圧に注目して、1970年代に隆盛した共和主義解釈に対抗する新しいパラダイムを創りあげてきた。ポスト共和主義とも呼ばれる、そうした立場の代表者はアラン・テイラーである。彼の歴史解釈は、21世紀のポピュリズム時代に見られる社会的分断や暴力性を、植民地期や建国期の歴史にみいだしたかのような側面がある。
 ロナルド・フォルミサノやジェームズ・モローンも、現在のポピュリズムの淵源を探って、建国以来のアメリカの歴史を見直した。彼らの研究は、ポピュリズムを、自由主義や共和主義とならぶアメリカ史の伝統の一つとして捉えようとする試みといえよう。
 このシンポジウムでは、そうした研究を踏まえたうえで、アンテベラム期の報告を三つ立てることにより、植民地期以降、今日に至るまでのポピュリズム現象の深層を読み解いていく。一八一二年戦争から南北戦争に至るまでを、アメリカ・ポピュリズムの基層の一つが創造されたと時期と捉えて、ポピュリズムとは何なのかを考察したいのである。
 ポピュリズムとは、大づかみに言うなら、「人民」理念を掲げて賛同者を結集させ、敵対する者を暴力に訴えてでも排斥するものである。人民理念と言い、人々の結集と排斥のかたちと言い、アメリカ史の文脈に沿って立ち入った分析をしなければ、ポピュリズムを歴史研究として明確に理解したことにはならない。
 本シンポジウムが対象とするアンテベラム期は、州政府、連邦政府がともに制度的に整備されていく時期である。ポピュリストの掲げる反政府主義の深層を考えるうえで、政府機構の発展期であったアンテベラム期は興味深い事例を示してくれる。参加者との議論を通じて、アメリカ・ポピュリズムについてのみならず、アンテベラム期の歴史像の理解も深めることを願っている。

シンポジウムB
「アジア系移民は『セトラー』なのか――植民地主義、戦争体験とその記憶化」

 本シンポジウムでは、昨年度の年次大会シンポジウムA「セトラー・コロニアリズムと向き合うアメリカ先住民―その歴史と現在」にひき続き、セトラー・コロニアリズムの議論を出発点の一つとして、ハワイやマリアナ諸島などの島嶼地域における先住民、及び北米(ハワイを含む)日系・沖縄系移民を中心としたアジア系移民の戦争体験の歴史と記憶構築に関する再検討を行う。前回のシンポジウムでは、「セトラー」が入植・定住した土地における先住民の主権や先住性を強調したセトラー・コロニアリズム論は、必ずしも先住民研究が提示する視点と一致するものではないことが指摘された。一方で、セトラー・コロニアリズムを分析枠組みとして共有することで、先住民研究を黒人研究、移民・エスニック研究やポスト・コロニアリズム研究など異なる研究分野と接続する可能性があることも議論された。
 以上の議論を受け、本シンポジウムでは19世紀末のアメリカが大陸及び海洋帝国として拡張していくなか、自己決定権や主権を奪われ、自らの土地において貧困や社会的不平等に苦しむこととなった先住民と、そのような地域に移住してきたアジア系移民との関係性に着目する。具体的には、第二次世界大戦中、北米やハワイで収容された日系・沖縄系移民の戦時体験及びマリアナ諸島の戦跡を中心とした空間形成について、日米帝国による植民地主義の文脈から考察するだけではなく、先住民との複雑な関わりから検討する。
 さらに、このような地域では1960年代以降になると、公民権運動の影響を受けつつ文化復興運動や自己決定権・主権を求める先住民の運動が行われるようになった。主流社会への同化を志向するのではなく、植民地支配に関連した歴史的不正義を追及しつつ、「先住民」としての独自の地位を求める人びとが現れたためである。先住民運動は政府や主流社会をも動かし、植民地化や同化政策についての謝罪や補償を協議・実現してきた。このようなポストコロニアル文脈において、アメリカ政府による強制移住・収容の「犠牲者」となった日系・沖縄系の体験と歴史はどのように関わるのかも本シンポジウムで考察する問いであり、それはまさにセトラー・コロニアリズムの問題を問うものである。特に、2000年代後半からは、ハワイやグアムの先住民の学者/活動家が中心となり、先住民以外の人びとを入植者(セトラー)と認識し、欧米系だけではなくアジア系移民も土地や経済を独占し、先住民を排除してきたとする「アジアン・セトラー・コロニアリズム論」が台頭してきた。つまり、「アメリカ帝国」におけるアジア系移民の戦争体験の記憶化は、欧米系白人国家アメリカの犠牲者という一枚岩的理解から脱却し、複数の人種・エスニック集団・帝国が絡み合う支配権力構造の中で再検討される必要が出てきているといえる。また、マリアナ諸島に関しては「先住民の戦争体験」を記憶化する過程で、アジア系移民を含む人々の移動がどのように関わっていたかという分析・考察を行うことにより、セトラー・コロニアリズム論を再検討することが可能となる。
 以上の議論は、アメリカ史研究におけるアジア出身の移民とその子孫の位置づけを考えるうえでもクリティカルな含意を持つ。近年、太平洋島嶼地域の先住民も含めて「アジア系アメリカ人および太平洋諸島出身者(Asian Americans and Pacific Islanders=AAPI)」や「アジア系アメリカ人、ハワイ先住民(Native Hawaiians)および太平洋諸島出身者(AANHPI)」が使用されるようになったが、この人びとの歴史において、アジア太平洋島嶼地域における「セトラー」たちと先住民が重ねた植民地主義・帝国主義・戦争の経験と記憶をどのように反映させるかも問われている。
 本シンポジウムは三報告から構成され、和泉報告では先住民と北米日系人の戦時体験(収容・強制移動)を先住民との関係性から検討し、「セトラー」概念の有効性と限界について明らかにする。秋山報告では、ハワイのホノウリウリ収容所跡地のアメリカ国立史跡化を事例に、かつてのハワイ先住民の土地をめぐる「歴史認識ポリティクス」を強制収容経験、ハワイ型セトラー・コロニアリズム理論、沖縄系移民のダブルマイノリティの理論を踏まえて検討する。新井報告では、マリアナ諸島(グアム・サイパンを中心に)における戦跡の残され方に着目し、先住民の戦争体験の記憶化とともに、その過程におけるアジア系移民などの「セトラー」の関わりについて論じる。本シンポジウムはアメリカ帝国の先住民及び日系・沖縄系を中心とした発表によって構成されるが、その後の質疑応答ではAAPI/AANHPIの人びとの植民地・戦争体験も含んだ議論が展開できるようにしたい。

シンポジウムC
「ケア労働のアメリカ史――パンデミック期を経て再考するケア」
 新型コロナウイルス感染症が拡大した時、エッセンシャル・ワーク(必要不可欠な仕事)としてケアの重要性が改めて見直された。エッセンシャル・ワーカーと呼ばれた人たちが誰だったのかを、もう一度考えてみよう。メディアなどで多く取り上げられたのは医療従事者、介護従事者、福祉関係者、公衆衛生関係者などであり、彼らが自分や家族を犠牲にしてまでも献身的に行ったケア労働に対して、人々は賛辞を贈った。
 しかし、パンデミックが長引くにつれて、ケア労働者がその労働の過酷さに見合った報酬や待遇を得ているとは言えず、社会的な保障さえも十分ではないことが明らかになってきた。その理由のひとつに、歴史的に育児や介護、家事などのケアは、無償か低賃金で、主に女性によって担われてきたことがある。ケアはそれに対して報酬が支払われるべき「仕事」ではなく、「女性の領域」とみなされた私的領域において、女性が「自然に」担う役割と位置付けられてきた。女性の社会進出が進み、家庭内のケアが少しずつ外部化され有償化されても、ケア労働の報酬は安価なものに留め置かれてきた。付加価値を追い求める資本主義経済のもとでは、ケアを担う人材は、経済的格差などを利用して、貧困者、移民、人種的マイノリティなどに振り当てられたことが、それを可能にしたのである。
 他方で、ケアをされる側としてまず想定されるのは、子ども、高齢者、病人、障害者などの、社会的に周縁化された人々であろう。しかしよく考えてみれば、我々は誰もが、たとえ自分の身の回りの面倒は自分でみることができる若く健康な成人であったとしても、日常生活を送るためには常に誰かにケアされている。それゆえ、保育や教育に携わる人、公共交通機関や運輸・物流に携わる人、公共の場の清掃やごみ収集に携わる人が行うエッセンシャル・ワークもまた、広い意味でのケアなのである。つまりこの社会では、ケアは誰かが行わなければならず、実際常に誰かが行っている。
 そこで問うべき(だが大抵は問われない)は、「誰が、誰を、なぜ、どのようにケアしているのか、そしてそれを誰が管理しているのか」ということである。本シンポジウムでは、日常において見過ごされがちな、そしてそれゆえに歴史研究においても見落とされがちなケアについて、ジェンダー、セクシュアリティ、階級、人種などのさまざまな要素が絡み合う社会的・経済的権力関係という視点から再検討する。
 報告の時代、地域、テーマは多岐にわたるが、いずれもケアが社会の変化に深く関わっている時期を描いている。まず松原宏之氏は、ともすると周縁に位置付けられるケアの歴史を、初期共和国の政治史・政治文化史に位置付ける。次に畠山望氏は、革新主義時代の活動団体を事例として、活動家が育つ文化的土壌について考察する。そして西﨑緑氏は、アフリカ系アメリカ人の産婆に焦点を当てて、近代医学と女性の身体や出産の社会的統制について検討する。これらの報告を受けて、医療政策・公衆衛生史に造詣が深い平体由美氏にコメントをしていただく。以上を通して、日常でも歴史的にも見落とされがちなケアの重要性を明らかにするとともに、それをどのように政治的、経済的、文化的に位置付けることができるのかを考察したい。

・事前登録のご案内については7月下旬までに、プログラム完全版については8月下旬までに公開する予定です。
・三連休と重なりますので、航空券や宿泊先の確保など早めに行っていただくことをおすすめいたします。

2023年05月31日

第57回例会(7月例会)「歴史の中の感情を描く 感情史とアメリカ史」開催のお知らせ(スケジュール追記)

日本アメリカ史学会は、以下の要領で第57回例会(7月例会)「歴史の中の感情を描く
 感情史とアメリカ史」を開催いたします。近年、歴史学界で注目を集める感情史とア
メリカ史の接点について、多くの会員のみなさまと議論を深めることができればと思い
ます。どうぞ奮ってご参加ください。

日時:2023年7月22日(土)14時00分~16時30分

開催形式:オンライン開催(Zoom)

プログラム:

14:00-14:10 
趣旨説明:大鳥由香子(東京外国語大学)

14:10-14:40
報告1:森山貴仁(南山大学)
「不合理の合理――アメリカ保守主義運動と感情」

14:40-15:10
報告2:久野愛(東京大学)
「消費主義社会拡大にみる感情と身体の歴史―― 1930年代日本におけるアメリカ的百
貨店の導入と近代化する笑顔」

15:10-15:20

休憩

15:20-15:35
コメント:伊東剛史(東京外国語大学)

15:35-15:50
コメント:佐々木一惠(法政大学)

15:50-16:30
質疑応答およびディスカッション

趣旨

近年、感情をめぐる探究は心理学や神経科学、文化人類学から歴史学へも広がりをみせ
ている。人々の心の動きをめぐる歴史研究として最も広く知られているのは、アナール
学派の心性史だろう。感情史は比較的新しい分野であり、自然科学における感情研究の
深化に多分に影響されたものである。感情史はヨーロッパの研究者が牽引している分野
であるが、バーバラ・H・ローゼンワイン『感情史とは何か』、ヤン・プランパー『感
情史の始まり』、アラン・コルバン『感情の歴史』などの翻訳が相次いで刊行され、日
本でも注目を集めている。アメリカ合衆国では、エモーショノロジーの提唱者のひとり
であるピーター・スターンズが感情史の普及に精力的に取り組んでいる。

他方、アメリカ史では感情史という枠組みを用いることはなくとも、人々の心の動きを
探る試みは様々に展開されてきた。情念(passion)、情感(sentiment)や感性(sensibili
ty)など、人々の心の動きに関する概念や表現はアメリカ史研究者にはお馴染みのもの
であろう。植民地時代における大覚醒やマッカーシズムの時代におけるパラノイア、核
戦争の恐怖に至るまで、人々の集団心理とそのダイナミズムは繰り返し議論の俎上にの
せられてきた。さらに、奴隷制廃止運動からブラック・ライブズ・マター運動に至るま
で、時と場所を超えて社会の変革を目指す取り組みの原動力にも挙げられるのが共感(s
ympathy/empathy)である。森山貴仁氏が研究対象とする保守主義においても、人々の感
情的な紐帯が運動を支えているとみなされることも多い。また、久野愛氏が牽引してき
た感覚史のように、外部からの刺激に対するより直接的、身体的な変化を歴史的に考察
する取り組みも進んでいる。

本例会では、感情をめぐる歴史研究に取り組んでいる二人の若手研究者による報告に続
いて、『痛みと感情のイギリス史』の編著者の一人である伊東剛史氏、さらに感情史と
関わりの深いジェンダー史、思想史の観点から佐々木一惠氏にコメントをお願いする。
主にヨーロッパ史の文脈で紡がれてきた感情史とアメリカ史の対話を試みる機会となる

※例会終了後、報告者・参加者との懇談の機会として、30分程度のアフターセッション
を予定しています。

※参加手続き及び関係事項
・参加される方は、7月20日(木)までに、こちらのフォームから事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせします。

・非会員の方のご参加には会員の紹介が必要です。詳細は運営委員会(office [at]
jaah.jp)までお問い合わせください。

2023年05月07日

第56回例会(修士論文報告会)の記録

日本アメリカ史学会会員の皆様

2023年4月に開催されました第56回例会の記録をアップロードいたしました。ファイル
こちらからダウンロードできます。

日本アメリカ史学会運営委員会

2023年05月04日

第57回例会(7月例会)「歴史の中の感情を描く 感情史とアメリカ史」開催のお知らせ

日本アメリカ史学会は、以下の要領で第57回例会(7月例会)「歴史の中の感情を描く 感情史とアメリカ史」を開催いたします。参加登録につきましては、続報でお知らせいたします。どうぞ奮ってご参加ください。

日時:2023年7月22日(土)14時00分〜17時00分
開催形式:オンライン開催(Zoom)

趣旨

近年、感情をめぐる探究は心理学や神経科学、文化人類学から歴史学へも広がりをみせている。人々の心の動きをめぐる歴史研究として最も広く知られているのは、アナール学派の心性史だろう。感情史は比較的新しい分野であり、自然科学における感情研究の深化に多分に影響されたものである。感情史はヨーロッパの研究者が牽引している分野であるが、バーバラ・H・ローゼンワイン『感情史とは何か』、ヤン・プランパー『感情史の始まり』、アラン・コルバン『感情の歴史』などの翻訳が相次いで刊行され、日本でも注目を集めている。アメリカ合衆国では、エモーショノロジーの提唱者のひとりであるピーター・スターンズが感情史の普及に精力的に取り組んでいる。

他方、アメリカ史では感情史という枠組みを用いることはなくとも、人々の心の動きを探る試みは様々に展開されてきた。情念(passion)、情感(sentiment)や感性(sensibility)など、人々の心の動きに関する概念や表現はアメリカ史研究者にはお馴染みのものであろう。植民地時代における大覚醒やマッカーシズムの時代におけるパラノイア、核戦争の恐怖に至るまで、人々の集団心理とそのダイナミズムは繰り返し議論の俎上にのせられてきた。さらに、奴隷制廃止運動からブラック・ライブズ・マター運動に至るまで、時と場所を超えて社会の変革を目指す取り組みの原動力にも挙げられるのが共感(sympathy/empathy)である。森山貴仁氏が研究対象とする保守主義においても、人々の感情的な紐帯が運動を支えているとみなされることも多い。また、久野愛氏が牽引してきた感覚史のように、外部からの刺激に対するより直接的、身体的な変化を歴史的に考察する取り組みも進んでいる。

本例会では、感情をめぐる歴史研究に取り組んでいる二人の若手研究者による報告に続いて、『痛みと感情のイギリス史』の編著者の一人である伊東剛史氏、さらに感情史と関わりの深いジェンダー史、思想史の観点から佐々木一惠氏にコメントをお願いする。主にヨーロッパ史の文脈で紡がれてきた感情史とアメリカ史の対話を試みる機会となる。

司会
大鳥由香子(東京外国語大学)

報告
久野愛(東京大学)
森山貴仁(南山大学)

コメント
伊東剛史(東京外国語大学)
佐々木一惠(法政大学)

2023年04月19日

日本アメリカ史学会20期ならびに21期の代表選出選挙 第二次投票のお願い

日本アメリカ史学会会員各位

日本アメリカ史学会20期ならびに21期の代表選出選挙(第一次投票)の結果をもとに第二次投票候補者リストを作成し、ホームページに掲載しました。ご確認ください。2023年3月にお送りした選挙実施要領に基づき、第二次投票を2023年5月17日(水)(必着)で行っていただくよう、お願い申し上げます。なお、第二次投票候補者リストを開くパスワードは選挙実施要領に記載されています。

第二次投票候補者リスト(パスワードは選挙実施要領に記載)

運営代表、編集代表それぞれの投票用紙に記入できる名前は2名までです。3名以上記入すると無効票になります。速やかな投票を重ねてお願い申し上げます。

2023年4月20日
日本アメリカ史学会運営代表
土屋和代

2023年04月16日

博士論文・アメリカ史関連著書に関する情報提供のお願い(『アメリカ史研究』46号)

会員各位

『アメリカ史研究』第46号(2023年8月刊行予定)では、2022年度内に学位を取得した会員の博士論文一覧および2022年度内に会員が著者・共著者・翻訳者として出版されたアメリカ史関連の書籍の一覧を掲載します。学位取得された会員、著書を出版された会員は、それぞれ以下のGoogleフォームから情報をお寄せください。〆切はいずれも5月31日(水)といたします。なお、会誌第45号141頁に掲載された要項に基づき、すでに編集委員会宛にメールを送付された方は、本フォームによる送信は不要です。

※博士論文
・2022年4月~2023年3月のあいだに博士論文を提出し学位を取得された会員は、(1)論文提出者の氏名、(2)論文提出先の大学および研究科、(3)学位取得年月、(4)論文タイトル、(5)論文要旨(400字以内または800 words程度)を、こちらのフォームからお知らせください。

※アメリカ史関連書籍
・2022年4月~2023年3月のあいだにアメリカ史関連の書籍(単著書、論文集、翻訳を含む)を刊行された会員は、こちらのフォームからお知らせください。

2023年04月04日

第20回年次大会 自由論題報告の再募集

日本アメリカ史学会では、第20回年次大会を、2023年9月16(土)・17日(日)の2日間、北海学園大学(札幌市豊平区旭町4丁目1番40号)で対面で開催いたします。

本大会では、2日目の午前に自由論題セッションを設けます。2日目の自由論題セッションでのご報告を希望される方は、以下の情報を明記のうえ「大会報告応募」と題して、2023年4月20日(木)までに、電子メールでお申し込みください。運営委員会で提出資料を検討し、結果を後日通知いたします。ご希望に添えない場合もありますので、その旨あらかじめご了承ください。

遠隔地から参加する大学院生などのB会費会員で、所属大学等の機関あるいは何らかの学術研究費から旅費の支給または補助を受けることのできない方には、当学会より規定の旅費補助が出ます。

また、現在非会員の方も、ご入会いただければお申込みいただくことができます。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

日本アメリカ史学会運営委員会
----------------------------記-----------------------------
日本アメリカ史学会第20回年次大会 自由論題報告の募集

以下の情報を記載したMS Wordファイル(.docx)を電子メールに添付し、「大会報告応募」と題して2023年4月20日(木)までにお申し込みください。
1) 氏名:
2) 所属:
3) 連絡先住所:
4) 電話番号:
5) メールアドレス:
6) 報告タイトル:
7) 報告要旨(1500字程度):
【問題の所在、先行研究との関係、分析の方法、結論のオリジナリティがわかるようにまとめてください。】
8) 文献目録(一次史料+主要二次文献):
9) 関連業績:
10) (遠隔地から参加するB会費会員のみ)旅費補助を希望するか:希望する/希望しない

*お申し込み先:日本アメリカ史学会事務局
 メールアドレス:office★jaah.jp
       (★の部分を@に置き換えて下さい)

2023年04月01日

学会名簿情報ご確認のお願い

日本アメリカ史学会会員の皆様

日本アメリカ史学会では、2023年5月頃に名簿(pdf形式)の発行を予定しております。2021年に発行された名簿をご確認のうえ、会員情報に変更・修正がある方は、名簿発行の都合上、4月末までに学会事務局までお知らせください。


なお、会員に公開するのは以下の6点です。
*①会員氏名
*②所属(所属なしの方は空欄)

なお、所属欄にはご連絡をいただいた情報に基づき次の略号を用います。(院)大学院生

(講)兼任講師、非常勤講師など

(助)助教あるいは助手

(名)名誉教授

(客)客員教授あるいは客員研究員

*③勤務先住所(大学院生は通学先大学の住所。該当しない方は空欄)
*④勤務先電話番号(該当しない方は空欄)
*⑤メールアドレス(会員MLに登録するメールアドレス)
*⑥専攻分野(できるだけ簡潔に。「アメリカ史」だけでなく分野を明記してください)


変更の際には、学会ホームページ(http://www.jaah.jp/5/ii_1/)に掲載されている「会員情報変更届」に必要情報をご記入のうえ、学会事務局までメールないしは郵送にてお送りいただければ幸いです(メールアドレス:maf-jaah★mynavi.jp)(★の部分を@に変更してご送信ください)。


以上、どうぞよろしくお願いします。


2023年3月30日

日本アメリカ史学会運営委員会

運営委員会・編集委員会代表選挙について

会員各位

皆様のお手元に、業務委託先の毎日学術フォーラムより発送された、次期運営・編集代表選挙の実施要領および投票用紙などが届いている頃かと存じます。

当学会では二段階選挙を行なっております。一次投票は締め切りが4月12日(水)(必着)となっておりますので、お早めの投票をお願いいたします。

一次投票の投票用紙は、被選挙人名簿が掲載された、青と白の用紙です。

二次投票の候補者は4月29日(土)までに日本アメリカ史学会のホームページに発表する予定です。二次投票のための投票用紙・投票用紙用内封筒・返信用封筒は、今回お送りした書類一式の中に同封されております。二次投票までは捨てずに実施要領とあわせて保管いただきますよう、お願いいたします。

詳細は、同封した選挙実施要領をご覧ください。

なお、もし選挙関連書類がお手元に届いていない場合、あるいは同封された書類等に不足があった場合は、毎日学術フォーラム内の学会事務局(maf-jaah★mynavi.jp)までお問い合わせください(★の部分を@に変更してご利用ください)。

それでは、皆様のご投票をお待ちしております。

2023年3月30日
日本アメリカ史学会運営委員会

第56回例会(4月例会)開催のお知らせ

日本アメリカ史学会は、以下の要領で第56回例会(修士論文報告会)を開催いたします。若手研究者の研究成果をめぐり、多くの会員のみなさまに議論にご参加いただきたく存じます。年度はじめでご多用の時期ではございますが、是非ご参会ください。

日時:2023年4月22日(土)14時00分~17時25分
開催形式:オンライン開催(Zoom)

※参加手続き及び関係事項
・参加される方は、4月20日(木)までに、こちらのフォームから事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせします。

・大学院生以外の非会員の方のご参加には、会員の紹介が必要です。紹介を得られる会員がいらっしゃらない場合は、運営委員会 (office[at]jaah.jp) にお問い合わせください。

・大学院生は、非会員であっても所属の記入のみでご参加いただけます。

【プログラム予定】
14:00~14:05
挨拶・趣旨説明

14:05〜15:05 第1報告
報告者:樋浦ゆりあ(一橋大・院)
タイトル:ムラトーたちの「痕跡」――アメリカ合衆国ヴァージニア州における人種保全法・出生登録・優生学運動とミックス/混血
コメンテーター:小野直子(富山大)

15:15〜16:15 第2報告
報告者:前田祐梨子(東京大・院)
タイトル:第二次世界大戦期の空爆と道徳――アメリカのキリスト教会指導者らを中心に
コメンテーター:高田馨里(大妻女子大)

16:25〜17:25 第3報告
報告者:吉田梨乃(一橋大・院)
タイトル:Doing History to Never Let the World Forget: Historical Practice to Preserve, Protect, and Promote the Legacy of Africatown, Alabama and the 110 Souls of the Last U.S. Slave Ship, Clotilda
コメンテーター:荒木圭子(東海大)

※例会終了後、報告者・参加者との懇談の機会として、30分程度のアフターセッションを予定しております。

※登壇者の所属は2023年2月のものです。

2023年3月25日

日本アメリカ史学会運営委員会

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