2021年09月30日

【日本アメリカ史学会編集委員会】第45号特集投稿論文募集のお知らせ

日本アメリカ史学会会員のみなさま

『アメリカ史研究』第45号では、「環境」というテーマで論稿を募集します。下記の趣旨説明と投稿要領を参照のうえ、ふるってご応募下さい。

■趣旨説明
 『アメリカ史研究』第45号の特集は「環境」とする。2022年は、レイチェル・カーソンが『沈黙の春』(1962年)を出版してから60年となる。1960年代の抗議運動を経て、1970年には最初のアースデーが開催された。この間に人間の営みを直視して自然環境を守る運動を伴った思想としての環境主義(environmentalism)が芽生え、姿を現したのだ。環境主義は新たな学問領域としての環境史の形成を促し、1977年にはアメリカ環境史学会が設立された。グローバル化の進展にともなって人々の環境への関心がさらに高まる中、環境史は世代交代をしながら包摂的な学問領域として人為的な境界を越える可能性を示すに至った。本号の特集では、その最新の動向を分野横断的に提示したい。

 本誌では、40号(2017年)特集「『外』から捉え直すアメリカ史」において、小塩和人「環境史研究——第一世代の成果と第二世代の挑戦」が、アメリカ環境史をマッピングし、問題提起している。環境史に対する関心は1970年代からゆっくりと広がったが、1980年代においても、いまだ歴史教科書においてその視点は希だった。しかしその後数十年の間に、アルフレッド・クロスビーが論じた「コロンブスの交換(Columbian Exchange)」(1972年)のような環境史の知見が当たり前に盛り込まれるようになった。

 アメリカ史分野においては、フレデリック・ジャクソン・ターナーの「フロンティア学説」(1893年)のように、古くから自然環境が社会に与える影響についての言及がみられる。ターナーの環境決定論は、アメリカ例外主義と結びついて一つの大きな物語を提示するに至り、1970年代以降の環境史家が乗り越えるべき先例になった。小塩論文は、1990年代の雑誌上での論争が、アメリカ環境史における「分水嶺」になったと指摘する。資本主義の発展が労働関係ばかりでなく自然観にも影響したとする唯物史観と、文化的要因の変化を考慮に入れるべきという唯心史観とが衝突したのだ。第二世代の研究者はこうした論争を乗り越え、「環境と人間の相互関係」を描く学問領域として環境史を発展させてきた。

 環境史への関心の背景には、現代社会が地球規模の環境破壊に直面しているという現実がある。また、2021年発足のバイデン政権が、環境対策を大型連邦財政投資の新機軸として打ち出すなど、これまでにない積極的な展開がみられる。しかし環境史は、こうした現実面の分析だけでなく、環境的視点から物語を再構成することで、人為的境界を乗り越える可能性を提示している。第一の境界は、国境や州境、地域の境などの地理的境界である。環境問題においてはこうした境界は意味をなさず、そのことは必然的にナショナル・ヒストリーを解体し、グローバルな歴史叙述や、地域的な歴史理解をもたらす。越えられるべき第二の境界は、人種、ジェンダー、階級といった社会における分断線である。環境への注目は、開発における先住民居住地域での環境汚染など、資本主義そのものが構造的差別を内包して発展してきたことを明るみにした。そして第三は、学問領域の境界である。環境史は、社会史と重なりつつ、生態学や医学など自然科学の成果ばかりでなく、地理学、経済学、政治学、文学、思想史など隣接する領域を包摂して発展してきた。こうして、「環境」と「自然」を所与のものではなく歴史的構築物として捉え直す視座がもたらされた。さらに、環境史の対象は、環境意識が高まるはるか以前の過去へと広がっている。

 先述した小塩論文は次のように締めくくられる。60年代の政治文化を背景に同じ年に誕生したアメリカ環境史学会とアメリカ史研究会(現アメリカ史学会)は、「分野横断的に新たな問いを立て、空間軸や時間軸を組み替えることで、既存の研究をとらえなおす使命を負っている」。あらためて、本特集をそのような機会としたい。


■特集投稿論文の要領
1) 投稿資格
  日本アメリカ史学会の会員

2) 制限枚数
  本文・脚注ともに1ページ 43字×38行で 17ページまで 注・図表を含む(厳守)
  (英数字は2文字で、かな1文字と数える。)

3) 期限
  完成原稿の提出 2022年2月4日(金)必着

4) 注意事項
①完成原稿は、メール添付によりMSワードあるいはPDF形式のファイルの形で編集委員会Eメールアドレス(下記)に送付し、同時にハードコピーを学会事務局に郵送してください(期限厳守)。なお、編集委員会からの受領通知を必ずご確認ください。
編集委員会Eメールアドレス: editors@jaah.jp
事務局住所:日本アメリカ史学会事務局
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル
株式会社毎日学術フォーラム内

②原稿には表紙をつけ、そこに、投稿者の氏名、所属、連絡先(住所、電話番号、メールアドレス)を明記してください。査読の公平性を保つため、論文本文にはタイトルのみを記し、氏名等は記載しないでください。

③原稿は横書きとします。原稿のフォーマット等に関しては、日本アメリカ史学会ホームページに掲載の執筆要項にしたがってください。

④完成原稿は、編集委員会が審査し、その結果をすみやかに投稿者に通知します。

『アメリカ史研究』編集委員会

2021年09月28日

日本アメリカ史学会 第18期

アメリカ史学会第18期(2021年9月〜2022年9月)の学会組織および役員は以下のとおりです。

運営委員会
 代表   南川文里
 副代表  土屋和代
 会計   佐藤雅哉
 委員   飯島真里子、池上大祐、大鳥由香子、小野直子、倉科一希、佐藤円、山中美潮、鰐淵秀一

編集委員会
 代表   梅﨑透
 副代表  坂下史子
 委員   遠藤寛文、下斗米秀之、土屋由香、中野由美子、久野愛、森丈夫

幹事会
〈北海道・東北〉     小原豊志、村田勝幸
〈関東〉         土屋和代、梅﨑透
〈中部〉         久田由佳子、加藤公一
〈関西〉         倉科一希、中嶋啓雄、南川文里、坂下史子
〈中国・四国・九州〉    朝立康太郎、寺田由美
〈運営委員会正副代表〉  南川文里、土屋和代
〈編集委員会正副代表〉  梅﨑透、坂下史子

2021年09月13日

【日本アメリカ史学会編集委員会】第45号自由投稿原稿募集のお知らせ

『アメリカ史研究』第45号(2022年夏発行予定)では、下記のように自由投稿原稿を募集しています。執筆要項を確認のうえ、ふるってご投稿下さい。

1.投稿資格
日本アメリカ史学会の会員

2.制限枚数
論文:1ページ43字×38行で19ページまで
研究ノート:1ページ43字×38行で12ページまで
研究動向:1ページ43字×38行で9ページまで
※いずれも注・図表を含む(厳守)。また英数字は2文字で、かな1文字と数える。

3.期限
完成原稿の提出 2021年11月19日(金)必着
※投稿の事前申し込み制度は廃止しました。

4.注意事項
①投稿の際には、原稿に表紙をつけ、そこに投稿者の氏名、所属、連絡先(住所、電話番号、メールアドレス)と、ジャンル(「論文」「研究ノート」「研究動向」のいずれか)を明記してください(論文本文にはタイトルのみを記し、氏名等は記載しないこと)。

②原稿は横書きとし、フォーマット等に関しては、日本アメリカ史学会ホームページに掲載の執筆要項に従ってください。使用言語は日本語です。注記等、正しい体裁で提出されない場合は、査読対象とはなりません。

③投稿に際しては、当該分野の研究史を踏まえ、推敲を経た「完成原稿」を提出してください。字数、表記、構成などの点を含め、投稿論文としての要件を満たしていなければ、受理しないこともあります。

④原稿の提出は、メール添付によりMSワードあるいはPDF形式のファイルの形で編集委員会宛に送ると同時に、印刷したものを1部、郵送その他の方法で学会事務局に届けてください。

編集委員会メールアドレス:editors(a)jaah.jp (a)を@に置き換えください。
学会事務局住所:日本アメリカ史学会事務局
〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1パレスサイドビル
株式会社毎日学術フォーラム内

※電子ファイルだけでなく、ハードコピーも、締め切り当日までに必ず学会事務局に届くようにしてください。
※原稿を受け付けた後、編集委員会から確認のメールをお送りします。

⑤投稿原稿は、編集委員会と外部レフリーが審査し、その結果を投稿者に通知します。

『アメリカ史研究』編集委員会

2021年09月03日

第18回年次大会 参加手続き等

2021年9月11日(土)・12日(日)にオンラインで開催される日本アメリカ史学会第18回年次大会の、参加登録を受付中です。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。


※ 参加手続き及び関係事項
・参加される方は、9月7日(火)までに、こちらのフォームから事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせします。
・非会員の方のご参加には会員の紹介が必要です。詳細は運営委員会(office@jaah.jp)までお問い合わせください。
・Zoomの接続・操作練習会は開催しません。接続や操作方法を確認したい方は、Zoomのテストミーティングをご利用ください。詳細は以下のサイトをご参照ください(https://support.zoom.us/hc/ja/articles/115002262083


※ 託児施設利用 
本年次大会に参加するため託児施設を利用される会員は、学会より補助を受けられますので、運営委員会 (office@jaah.jp) までお問い合わせください。

2021年08月23日

第18回年次大会プログラム完成版

第18回年次大会プログラム完成版

2021年9月11日(土)・12日(日)にオンラインで開催される日本アメリカ史学会第18回年次大会の、全ての報告タイトル・要旨を含むプログラムが完成いたしましたので、こちらをご覧ください。

日本アメリカ史学会運営委員会

2021年07月16日

名古屋アメリカ研究会例会のお知らせ

会員の方から、以下のご案内がありました。

一部の各大学でワクチン接種がすすめられる一方で、東京では4度目の「緊急事態宣言」が発出されるなど、いまだ最終的な感染収束は不透明な状況です。そのため、例会をオンラインで開催しますが、そのメリットは、地球上のどこからでも(仄聞したところでは宇宙ステーションからでも)例会に参加することができることです。こうしたメリットを活かして、さまざまな地域から多くの方々に参加していただく研究会を開催したいと考えています。

次回の例会として、昨年末に惜しまれつつもご逝去なさった野村達朗さんを追悼することを企画いたしました。いまさらながらご説明は不要だと思いますが、野村達朗さんは、日本におけるアメリカ史研究者として、労働民衆史の分野を長年牽引し続けてきました。そのように、ご自身の実証研究をすすめるとともに、名古屋アメリカ研究会の創設の中心となって、東海地域におけるアメリカ研究の発展を担ってきました。

このような野村達朗さんの生前の精力的な活動を振り返るために、長らく野村さんと併走してきた方として、安武秀岳さんに、野村さんの教えを受けた方として、久田由佳子さんに、野村さんが切り拓いた労働民衆史を継承している方として、南修平さんに、それぞれご報告をお願いしました。

お三方のご報告を受けて、研究会として、学問的に討論したいと考えています。

また、生前の野村さんのお人柄を考えると、野村さんについてお話になりたい方が大勢いらっしゃるのではないかと拝察します。そこで、第二部として、そうした方々に思いのたけをお話しいただく機会を設けることにしました。

研究会は、南山大学アメリカ研究センターのご協力で、Zoomによって開催します。オンライン開催であることのメリットを活かして、遠隔地からの多数のご参加も期待しております。これまでの例会と同様に、非会員の方のご参加も歓迎いたします。ただし、名古屋アメリカ研究会の会員の方の紹介がない場合、参加理由をお書きいただきます。ご了承ください。

ご参加くださる方は、研究会前日の7月31日午後6時までに、以下のフォームから参加をお申し込みください。

https://forms.gle/cYpkbHu6o1YW3SD19


         記

2021年8月1日(日)午後2時からZoomによるオンライン開催

野村達朗さん追悼企画

第一部 歴史家 野村達朗 ~同僚、教育者、研究者~

報告者

安武秀岳(愛知県立大学名誉教授)
久田由佳子(愛知県立大学)
南修平(専修大学)

第二部 野村達朗さんを偲んで

午後5時終了予定

2021年06月19日

日本アメリカ史学会第18回年次大会開催のご案内

2021年9月11日(土)・12日(日)に開催される、日本アメリカ史学会第18回年次大会のプログラム概要(暫定版)は以下の通りです。新型コロナ感染症の感染状況に鑑み、昨年同様オンライン開催となります。参加手続き・オンライン開催関係事項等については、後日お知らせします。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。


日本アメリカ史学会第18回年次大会 プログラム概要(暫定版)
日時:2021年9月11日(土)・12日(日)
会議プラットフォーム:zoom


9月11日(土)
幹事会 11:30〜13:00

シンポジウムA 13:30〜16:30「アメリカ史研究と隣接諸社会科学の対話」
報告者:
川島浩平(早稲田大学)
小野直子(富山大学)
大野直樹(京都外国語大学)

コメンテーター:土屋由香(京都大学)
司会:佐々木豊(京都外国語大学)

総会 17:00〜18:00


9月12日(日)午前
自由論題 10:00〜11:40
(第1報告10:00〜10:45 第 2報告10:55〜11:40 )

第1セッション
秋山 かおり(日本学術振興会特別研究員PD・沖縄大学)
 ハワイ準州における戦争捕虜のエスニック・グループ別利用―1944‐1946年―
田渕有美(大阪大学)
 米国宇宙政策黎明期におけるNASA設立とPSACの関係

第2セッション
天野由莉(ジョンズホプキンズ大学・院)
 “She Willingly Consented”: アンテベラム期「南部医学」の精神的成り立ち
今井麻美梨(立教大学・院)
 19世紀アメリカ公共圏の再編と「リスペクタビリティ」―市民としてふさわしい、振る舞いと美徳


9月12日(日)午後
シンポジウムB 13:00〜16:00「アメリカ帝国/植民地主義再考―軍事主義・環境・市民権―」

報告者:
阿部小涼(琉球大学)
西 佳代(広島大学)
金澤宏明(明治大学)

コメンテーター:岡田泰平(東京大学)
司会:池上大祐(琉球大学)

シンポジウムC 13:00〜16:00「白人至上主義をめぐる歴史と歴史認識」
報告者:
加藤(磯野)順子(早稲田大学)
川浦佐知子(南山大学)
落合明子(同志社大学)

コメンテーター:和田光弘(名古屋大学)
司会:黒﨑真(神田外国語大学)


[シンポジウム趣旨文]

シンポジウムA 「アメリカ史研究と隣接社会諸科学の対話」
本シンポジウムでは「アメリカ史研究と隣接社会諸科学の対話」というテーマの下、アメリカ史研究と政治学・国際関係論・社会学などの社会科学の専門分野(ディスシプリン)との間で、どのような実りある統合が可能であるのかという点について検討することを目的とする。
 一般に、歴史学と政治学を初めとする隣接諸科学の間には、歴史現象を扱う際、方法論的にも認識論的にも、異なるアプローチをとることが指摘されてきた。つまり、単純化して言えば、歴史学においては、一次資料を広範に渉猟して掘り起こしつつ、特定の事例に没入して緻密な分析を行う(その意味で、過去の出来事は単に何かの事例というよりも、それ自体が主題となる)ことを通じて歴史的事象の個性を捉える“個別記述的手法”が取られるのに対し、社会諸科学においては、ある程度時間と空間を超越した人間の行動に関する一般理論を構築することに主眼が置かれ、個別事例研究はそのための手段として位置づけられる傾向が見られると言えよう。
 このように歴史学と隣接社会諸科学の間には、それぞれの学問分野の固有の“作法”に基づく相違がある一方、歴史学者が個別事例研究に従事する際には、社会科学者による理論的成果を明示的に参照することはあまりないとはいえ、人間行動に関する何らかの一般理論を前提として説明に盛り込んでいると言えるのではないのか。逆に、一般理論化を指向する社会科学者の方でも、一次資料調査に基づく事例研究を重視した上で理論を検証する手続きを重視する傾向も指摘されている。
 そこで本シンポジウムでは、時代的にもテーマ的にも限定されたアメリカ史研究を実践しつつも、隣接諸社会科学分野にも精通されている三人の研究者の方にご登壇頂き、アメリカ史研究と社会科学研究の間でどのような生産的な対話が可能なのか、ご自身の研究に照らし合わせつつご報告頂く。具体的には、スポーツ史と人類学、女性史とジェンダー論、政治外交史と国際関係論/政治学の各領域に焦点を当てた報告をお願いする。その際、歴史研究者が理論的インプリケーションのある研究をするという問題に限らず、社会科学の理論から示唆を得たアメリカ史研究の成果とか、アメリカ史の中で社会科学が形成される歴史的・制度的背景を探るとか、多様な切り込みから「アメリカ史研究と隣接社会諸科学の対話」の現状と課題を探ることにしたい。


シンポジウムB 「アメリカ帝国/植民地主義再考―軍事主義・環境・市民権―」
2019年8月15日付けのグアムの地元紙Pacific Daily Newsに、「マーシャル諸島民、ビキニ環礁の名をとって命名されたビールを受け入れらないと述べる」という見出しで始まる記事が掲載された。同記事によれば、テキサス州ダラスに立地する「マンハッタン計画ビール醸造会社(Manhattan Project Beer Company)」が自社ビール商品名に、「ビキニ環礁(Bikini Atoll)」と名付けて販売したことに対して、マーシャル諸島島民やほかの太平洋諸島島民から批判されている、とのことであった。ほかにも、“Plutnium239”や“Hoppenheimer”といった「核開発」を想起させる商品を製造販売している同醸造会社は、マーシャル諸島における核実験を世界史的に重要な出来事としてとらえることを意図していて、矮小化するつもりはなかったという言い分を披露したという。
この事例は、「アメリカ本土」が核実験によって島嶼に生きる人々を苦しめ、地域環境を破壊してきたことをいかに忘却してきたか、いかにその暴力に無自覚でいたかということを浮き彫りにする。軍事ジャーナリストの前田哲男は戦後太平洋における欧米諸国による核実験の歴史を「核の植民地主義」という概念でとらえ、冷戦を背景とした「東西」対立の視点だけではなく、植民地支配の歴史に付随する「南北」格差の視点の必要性を強調する。戦後アメリカは、グローバルな軍事基地ネットワーク形成をもとにした「基地の帝国」(チャルマーズ・ジョンソン)としてふるまうなかで核戦略をもそこに組み込ませてきた。しかし、アメリカ帝国/植民地主義の登場は、19世紀末のハワイ併合や、米西戦争後のいわゆる「海の西漸運動」によるカリブ海のプエルトリコ、太平洋のグアムフィリピンの領有を起点とする。さらに「国内植民地」という視点からは、19世紀に通底する「陸の西漸運動」に伴うインディアンの強制移住と土地接収にまでその起点を求めることもできよう。
したがって、アメリカ帝国/植民地主義を、陸・海の両面から観察するためには、地域社会内部の矛盾や不条理を追求してきた「社会史」/「政治史」の視点と、外部へ展開していくことを従来描いてきた「外交史」/「対外関係史」の視点との接合を目指す必要がある。A・G・ホプキンズの新著American Empire(2018)は、「島嶼帝国Insular Empire」という概念をつかって、太平洋においてはハワイとフィリピン、カリブ海ではキューバとプエルトリコに注目して、現地の社会構造、経済・通商関係、政治的地位をめぐる動向(ハワイは「州」、フィリピンは「独立」、キューバは「保護国」、プエルトリコは「コモンウェルス(自治領)」と、それぞれの「植民地以後」の政治的地位が異なる)を詳述するとともに、それがアメリカ本土内の政治・社会(例えば黒人公民権運動)とどう絡んだのかという点も論じている。こうした視点は、米軍基地の過度なプレセンズによって地域社会への事件・騒音・有害汚染物質の流出が頻発している沖縄の現状に目を向けていくことにもつながるであろう。
 以上の問題意識と研究動向を踏まえて、本シンポジウムでは「アメリカ帝国/植民地主義」を、島嶼地域社会とのかかわりから再検討していく。具体的には、沖縄(およびプエルトリコ)、グアム、ハワイを対象として、軍事主義ネットワーク、環境政策、政治的地位(市民権構造)をキーワードにしながら、周縁/境界の視点から、〈アメリカ〉を再構築するための一助としたい。


シンポジウムC「白人至上主義をめぐる歴史と歴史認識」
 現在アメリカでは、「ブラック・ライヴズ・マター」の高まりを受け、黒人や先住民や他のマイノリティだけでなく、白人も含め、白人至上主義の歴史と現在を根本から問い直し、克服していこうとする積極的な取り組みがかつてない規模で起きている。その際、問われている白人至上主義の射程には、白人が非白人より優れているという意識だけでなく、社会、政治、経済に組み込まれ白人に有利に働く制度、およびそれらを支え正当化する文化的規範までが含まれる。アン・ローラ・ストーラー(2002)によれば、白人至上主義は、「他者」 への恐怖、東洋人や黒人による性的攻撃からの白人女性保護への執念として現れたという。しかし、それはヨーロッパ支配と白人至上主義の単なる正当化ではなく、高い階級意識にもとづいた論理の一部であり、異議を唱えるヨーロッパ人下層に的を合わせた指令であった。ストーラーが対象としたのはオランダ領バタヴィアであったが、舞台を英領アメリカ(以降)に移しても、白人至上主義にはジェンダーと階級が非常に大きな要素であり続けたことは明らかである。
 人種・階級・ジェンダーが複雑に絡み合った白人至上主義を問い直す動きも、当然ながら単純に進むわけではない。たとえば、白人至上主義の象徴という理由から、南部連合を顕彰する記念碑や銅像の撤去、またラシュモア山の4人の大統領の彫像や西部開拓と関連する記念碑の撤去を求める動きがある。これは、アメリカがより公正な社会を築きながら国民統合を実現するために、公共空間においていかなる歴史認識が適切なのかを、あらためて問う動きといえる。しかし、撤去すべき記念碑や銅像の選定、撤去した記念碑や銅像の扱い方、新たな記念碑や銅像の建立などをめぐっては、非白人内部と白人内部、また連邦・州・郡レベルでさまざまな議論があり、政策に移される過程では、多様な利益集団による衝突と妥協が起きている。
このことから、白人至上主義の歴史と現在を問い直す際に必要なことは、白人至上主義が「維持される/克服される」「強化される/弱体化される」背景には何があるのかにとどまらず、その一筋縄ではいかない歴史を丁寧に追うことであろう。平野克弥(2020)が述べるには、「普遍的な規範によって例外的な存在を生み出し、それを絶対的な支配関係のなかに放置する状態が差別であり・・・それゆえに差別は常に心理的・物理的暴力を伴っている」。このことをアメリカ史に当てはめるならば、白人至上主義が「維持されつつ克服される」という一見矛盾した状態を見定めて、その歴史的起源や展開を丁寧に追うことが、我々には問われているのではないだろうか。
そこで本シンポジウムでは、アメリカにおいて白人至上主義が辿った複雑な過程について事例研究を通して考察したい。まず、白人対非白人の二項対立として捉えがちである「白人至上主義」は、どのような状況において「どの白人」が至上であるための思想として誕生したかという歴史的背景を、改めて19世紀アメリカに探究する。次に、19世紀後半、西部が合衆国へと編入されていく過程における、先住民土地の剥奪を検討することで、土地・資源開発の根底に横たわる構造的な人種差別を考える。最後に、ポスト市民権運動時代の南部、とりわけリッチモンドに焦点を当て、黒人の地位が全体的に向上したにもかかわらず、白人至上主義の象徴たる南部連合像の撤去が遅々として進まなかった要因を、当時の時代的な文脈や人種の記憶を巡るポリティクスから探る。

2021年06月01日

第51回例会(7月例会)開催のお知らせ

日本アメリカ史学会 第51回例会「アンテベラム期南部史研究の新解釈」

日時:7月10日(土) 午後2時~5時
媒体:Zoom

企画趣旨
 最近の重要な南部研究においては、アンテベラム期南部の取り上げ方はかつてと大きく異なる。よく知られるとおり、社会史研究は1960年代の社会および学界の動きを受け、綿花プランテーション内における奴隷と奴隷所有者の間の力関係を、心理にも踏み込んで描いた。奴隷の視点に注意を払って掘り下げられたその南部社会像は、アメリカ史像全体の構築にきわめて大きな影響を及ぼしており、高く評価されるべきである。ただ、それら従来の研究はしばしば、南部の奴隷制度を北部の資本主義市場経済と対立するものとして提示しがちだった。また分析空間の面で固定した、静的な印象を与えるきらいがあったといえる。
 これに対し、スヴェン・ベッカート、エドワード・バプティスト、ウォルター・ジョンソンなどの研究は奴隷の経験を大きく取り上げつつ、綿花プランテーションとその外との、空間的な広がりとつながりに焦点をあてている。グローバルな綿花貿易や国内の奴隷売買、また奴隷も含めた物資輸送ルートとしての河川や、商取引の結節点として機能した都市などが取り上げられている。そしてプランテーションの経営や奴隷制度の運用も資本主義の発展に対応しており、それに呼応する暴力や搾取の仕組みが用いられていたとされる。スティーヴン・ハーンによる近年の19世紀通史もニューオーリンズに注目し、南部がそこからどのように地理的・経済的・その他の拡張を構想していたかに注意を促している。これらの新傾向に伴い、これまで統合的な社会像をえがく際にはあまり光が当たらなかった人口集団についても、検討が進んでいる。
 本例会では、このように動的で多様な性格を強調する南部史研究の潮流を踏まえ、それに対応する実証研究を報告いただく。新たな論点を提供いただくほか、新世代の経済史・社会史・文化史としての性格について、またこうした新しい研究が指し示す南部像・また19世紀史像についても議論したい。

報告:
柳生智子(慶応義塾大学)
 「国内奴隷取引ビジネスの再考:奴隷商人資料の分析を中心に」
児玉真希(東京大学)
 「アンテベラム期のニューオーリンズにおける貧困層女性と身体の管理」

コメント:
久田由佳子(愛知県立大学)
鈴木茂(名古屋外国語大学)


※参加手続き及び関係事項
・参加される方は、7月3日(土)までに、こちらのフォームから事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせします。
・非会員の方のご参加には会員の紹介が必要です。詳細は運営委員会(office@jaah.jp)までお問い合わせください。
・Zoomの接続・操作練習会は開催しません。接続や操作方法を確認したい方は、Zoomのテストミーティングをご利用ください。詳細は以下のサイトをご参照ください(https://support.zoom.us/hc/ja/articles/115002262083

2021年05月19日

大阪大学言語文化研究科言語社会専攻教員公募情報

大阪大学言語文化研究科言語社会専攻の教員公募 (2021年5月31日必着)

大阪大学言語文化研究科言語社会専攻は、北米地域に関する社会科学諸分野を専攻し、 大学院の授業、学部の専攻科目、英作文、LL などを含む英語実習、及び全学共通教育科目の授業を担当する教員を公募しています。

http://www1.lang.osaka-u.ac.jp/ls/about_ls/employment.html

2021年05月16日

立命館大学文学部教員公募情報

立命館大学文学部では、専任教員の公募を行います。(2021年6月22日必着)

詳細は以下をご確認ください。
http://www.ritsumeikan-trust.jp/file.jsp?id=497506&=.pdf

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