『アメリカ史研究』第41号(2018年夏発行予定)では、「メディアからのアメリカ史」というテーマで、特集論文を募集します。下記の趣旨説明と投稿要領を参照の上、ふるってご応募下さい。
・特集テーマ「メディアからのアメリカ史」趣旨説明
メディアは、アメリカ史にとっても重要な研究対象である。理念にもとづくアメリカの公共圏形成における印刷メディアや言論の役割、国民意識形成を支える全国メディアの登場、新聞や書物からラジオ・テレビへの移行がもたらした音声・映像メディア革命、そして今日のインターネット・メディアの登場がもたらした言論環境の激変など、メディアの変化はアメリカの歴史を動かしてきた。そして、言うまでもなく、「ポスト真実」とも呼ばれる現代においては、既存の大手メディアに対する信頼が低下するとともに、歴史的検証に堪えない議論が「真実」として喧伝され、コミュニケーションの分断と民主政治に対する不信が煽られている。メディアは、それぞれの時代を生きる人々の思考枠組、生活様式、政治文化を規定する基盤的な条件であり続けている。
2010年代の現状を鑑みれば、「メディアからのアメリカ史」が描こうとする射程は重層的である。第一に、アメリカ社会の歴史的趨勢を考えるうえでのメディアの果たしてきた役割を、いまいちど丹念で緻密な歴史研究の手法から明らかにすることが求められる。「フェイクニュース」批判にせよ、「反知性主義」批判にせよ、発信者・メディア・オーディエンスの関係性が過度に単純化されて理解されることが多い。公共圏や言論空間の歴史的生成は、さまざまな行為者間の複雑な権力関係が、それぞれの時代の技術的・空間的・コミュニケーション的な条件のなかで展開した結果であり、各時代のメディア環境のあり方を丁寧に追求する歴史研究の視点が、これまで以上に重要になっている。第二に、人々のあいだでの情報伝達やコミュニケーションを媒介するものという広義のメディアに注目すれば、出版物、新聞、ラジオ、テレビなどの狭義のメディアだけでなく、口承文化、書簡、音楽、映画、アート、記念碑、博物館、学校、教会なども、アメリカ史を動かす重要なメディア装置として再考することが可能である。これらのメディア装置は、人々の歴史的な経験、記憶、知識、思想などを再構築し、次世代の人々へと伝達することで、「歴史」を形づくっている。文化史や社会史研究でも重要な研究対象となっている対象を、「メディア」という観点から問いなおしたとき、どのような歴史が描かれるのか。最後に、歴史研究は、上記のような多様なメディア装置を、歴史的探求のための史料として用い、それを媒介とすることによって歴史的「事実」を再構築してきた。メディア環境が言論を分断し、「真実」を喧伝する政治言説が跋扈する現代においては、メディアを史料とした歴史研究が、実際のところ<何>を明らかにしているのかを徹底的に問う必要がある。すなわち、メディアを通して歴史研究が(再)構築する「事実」とは何か、粗雑な物語が溢れかえる「ポスト真実」の時代において、歴史研究が追求するものとは一体何なのか。「メディアからのアメリカ史」は、歴史的事実をめぐる方法論的・認識論的な問いかけにも開かれている。
以上のような問題関心をふまえ、本特集では、「メディア」を広い意味で取りあげ、「メディア」という視点からのアメリカ史研究の可能性を追求したい。狭義のメディア史はもちろん、広義のメディアの視点が切り開く新たな歴史叙述や、メディアが構築する「事実」の記述をめぐる方法論的な議論まで、メディアからアメリカ史の新局面に迫る、意欲的な論考の投稿を期待したい。
・特集論文投稿の要領
枚数:日本語で20,000字程度(400字詰め原稿用紙50枚)
締め切り:2018年2月14日(水)
*投稿に際しての注意事項
投稿申し込みの際には、原稿の題目・要旨、投稿者の氏名・所属・連絡先(住所・電話番号・メールアドレス)を明記してください(申し込みのフォーマットはありません)。申し込みは、下記のメールアドレスに添付ファイルとして送付するか、ハードコピーを学会事務局に送付してください。なお、編集委員会からの受領通知をかならずご確認ください(先般、いくつかのメールサービスからの連絡が届かない事故がありました)。
編集委員会メールアドレス: editors(a)jaah.jp (a)を@に置き換えください。
学会事務局住所:日本アメリカ史学会事務局
〒231-0023 横浜市中区山下町194-502
学協会サポートセンター内