第52回例会(12月例会)開催のお知らせ
日本アメリカ史学会 第52回例会
合評会 廣部泉著『人種戦争という寓話:黄禍論とアジア主義』(名古屋大学出版会、2017年)、同『黄禍論:百年の系譜』(講談社、2020年)
日時:2021年12月18日(土)14:00~17:00
会場:オンライン開催(Zoom)
趣旨
19世紀末から20世紀前半までの時代、欧米諸国が世界各地での植民地支配を広め、また強化しようとする一方、日本が帝国として立ち現われようとしていた。またアメリカでは1882年の中国人排斥法成立後、ハワイと米国本土で日本人移民・移住者がその数を増していた。このような動向および国際情勢に不安を覚えた一部の欧米人が公論の場で唱えた言説に、「黄禍論」がある。勃興する日本と人口規模の大きい中国をはじめとするアジアの人々が手を結び、欧米と対決するだろうと主張する「黄禍論」は、当時の人種概念の影響もあり、きわめて多くの媒体に登場することになった。だがそれは、戦争を含む国際関係を実際にどこまで左右したのだろうか。「黄禍論」やそこに見られる人種意識と国際政治の絡み合いの程度を見定めることは、現代を対象とする外交史研究の課題の一つである。
廣部泉氏は近年、この問題について大きな研究を続けて発表している。『人種戦争という寓話 黄禍論とアジア主義』では、アジアの民と白人の全面的な人種戦争を恐れる言説が19世紀末期の欧米圏で発生し、20世紀前半までの複数の戦争や、移民をめぐる社会の反応を受けて、国内政治に波及したほか国際政治に影響を及ぼすかと見えたことを論じている。また欧米側の分析にとどまらず、欧米人とアジア人を二項対立的にとらえ、アジア諸国民の連帯を求めるアジア主義という対抗言説が日本で発生したこと、人種を強調するこの言説を抑え込みたい国内政治権力側の意向にもかかわらず、それはやがて政府をも呑み込んだことも、詳細に論じている。続く『黄禍論 百年の系譜』では議論を第二次世界大戦後にも広げ、人種というマーカーにこだわる相互排他的な発言が冷戦期とその後も時論や報道の場に間歇的にあらわれたと論じ、それを前提とした冷静な日米関係の構築を提唱している。いずれも外交政策決定をめぐる政府資料はもちろん、日米の同時代書籍や主要紙誌、さらに国内の地方紙やヨーロッパ・オーストラリアなどの主要紙も渉猟する、膨大な資料調査に基づく研究成果であり、外交史研究であると同時に人種意識研究であって、日米関係史、日米双方の近現代史、人種論、移民史など多方面の研究者にとって、示唆に富んでいる。
今例会ではこの2冊を合評することとし、廣部氏からご研究の意図や工夫をご紹介いただくとともに、現代史・日米関係史の見地から、また黄禍論の表象研究の見地から、3名の評者にコメントしていただく。会員諸氏の活発な議論を期待したい。
報告: 廣部泉(明治大学)
コメント:油井大三郎(東京大学名誉教授・一橋大学名誉教授)
中嶋啓雄(大阪大学)
橋本順光(大阪大学)
司会: 飯島真里子(上智大学)
※参加手続き及び関係事項
・参加される方は、12月11日(土)までに、こちらのフォームから事前登録をお願いいたします。接続先URLは、参加登録をされた方に後日お知らせいたします。
・非会員の方の参加には、会員の紹介が必要です。詳細は運営委員会(officeアットjaah.jp)までお問い合わせ下さい。
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